龍の子育て

昔、朝の10時頃。海で貝砂利を一人で拾ってた時に話しかけてきた女の人は
「私も海で貝殻を集めてる」と言った。

そうして「ひと月前の干潮時に海の中に入って行って、沢山貝殻を集めた」と言っていた。
彼女は「波打ち際でも、貝殻は拾える。でも殆どが割れてしまってるし、それに照りもなくなってる。汚くなってる。
 シーズンに、海中で、死んだばかりの貝を拾えば、照り照りのつやつやで、綺麗な奴が沢山拾える。」
そう言ってた。

そうして、にこにこ微笑みながら、大きな、それは大きな宝貝を、どこからか持ってきて、
私にくれた。
「私、もっとすごいの持ってるからいいの。貴女にあげる」と言って、くれた。


夜中に長靴で海に入るのだそうだ。
ある時期、あるポイントに死んだばかりの貝が居るのもわかってて、
そうして、ひろって、たくさんひろって・・・。

綺麗な貝。沢山もってるって、さ。




貝がら。綺麗な貝なら、御店でも売ってる。沢山・・・。




あれから、半年しか過ぎてない。でも、あの日だけ遠い日に感じる。




今日も海に行った。子供等を連れて。
楽しく小さな岩場を歩かせれば、子供は子供。
運動が苦手な子も、そのうちチッコイ崖登り位はする。

色々な道を歩くのに、海は良い。
チッコイ岩場は、バランス大事だし、
波が来るのを避けながら歩くのは、結構スリリング。


そうして、相変わらず、拾い物をする。
海で、貝殻と、シーグラスと、石ころと。


今日の私は、ちょっと大きめの宝貝を拾った。
ミニミニミニが泣く。「俺は、まだなんにもとってない!」と言って泣く。

「頂戴!ちょうだい!チョウダイ!」

ちっこい手にのせてあげる。「ありがとう」にっこり笑う。

「・・・・。あげないよ。さわるだけだよ。」
又泣いた。「ほしいよ、欲しいよ。俺は今日、まだ何にも採ってない!」


「自分で拾わなきゃ駄目なんだよ。」



泣きべそかきながら、そうして、大きな宝貝を握りしめながら、
小さい宝貝を観つけては、「あ!あった!」って拾い進むミニミニミニ。



そのうち、小家人が、ウニの殻を拾った。ひとつ。綺麗な柄。
大切そうに持っている。
「それ、直ぐ割れるから気を付けないと」って言ったら、
「知ってるよ。だから大事にしてるじゃん。家まで、このまま持ってく・・・。」
そうして、指の上にのせたまま、他の貝砂利は、バラリと波に投げて。

「あ〜!お兄ちゃんずるい。俺も欲しい!俺まだなんにも〜!!!」

普段は、なんでも、せがまれると弟に譲ってしまう兄。
でも、ウニ殻は渡さない。そう簡単には、あげない。

そうして、またひとつGET。
「二つになった!綺麗だなぁ。座布団みたい♪」

うれしそうに大事にしてる。


「俺も欲しい〜!なんか欲しい〜!」

「海では、自分で拾わなきゃ、意味が無いんだよ。自分で拾うから楽しいんだよ!」
「見せてあげるし、触っても良いけど、あげないよ。」


そうして、流れが変わる。

「あ!」でっかいビー玉をひろう、小家人。

すっごいでっかい。ちょWWWでかすぎ。

「え〜!いいなぁ、おにいちゃん、いいなぁ・・・」
いや、今回は、あたしも羨ましい。ビー玉は、ここらでは、レア。いいなぁ。


・・・でも。自分で拾わないと意味が無い。



「ビー玉いいなぁ、おっきねぇ。いいなぁ・・・」
そう言ったら、「かぁちゃん、これあげるよ!」

さっきまで、大事にしてたウニ殻は、私のところに来た。
自分で拾わないと意味が無い。
でも、こどものプレゼントは、それはそれで、宝物。
この場合は・・・微妙だけど。まぁ、プレゼントと言う事で。



そのうち。目を皿のようにして必死に地面を観てたミニミニミニが、
妙な物を観つけた。

縦半分になった、元円筒形の石???

多分「魚網のうき」なんだとおもうんだけど、時々落ちてる。

それを観つけた。

「これ。ヤマトの波動砲みたいだ!」


そして、すぐ又もうひとつ、今度は、ちっと小さいの観つけた。
「わーい!俺が観つけた。
 俺だって観つけた!すごいぞ、すごいの観つけた!!!」



きっと、予想できるところで、予定調和的に綺麗な貝を集めるのも楽しいんだろうけども。
お店に行けば、もっときれいな大きい貝殻手に入るんだろうし、
誰かに譲ってもらえば、もっとすごいの手に入るのかもしれない。

でも、私は、やっぱり、この貝砂利が好きだ。
きっとこれは、世の中の殆どの人からみたら、ゴミ同然かもしれないけど。

貝が死んでから、果てしなく波を漂った貝殻が、少し割れたり、時には、全く割れずに、
そうして、風化しながら、自分の目の前に流れ着いた。

そんな貝殻は、海からのプレゼントの様な気がする。
波に削られて、くもりガラスになってる、シーグラスや、今日のビー玉も、
きっと、海からのプレゼント。
そんな、波間を抜けて、向かってきてくれた素敵な物をキャッチするのが楽しい。

時々、誰かにプレゼントする事もあるけど。

やっぱり自分で観つける事に意味があるんだって、思う。
簡単には、手に入らない。
何度も何度も海に行って、そんな努力と、偶然の力と、観つけようとする心と。


自分が、がんばって、
自分が、楽しんで、
自分の力で、成し遂げる・・・。

波間から、ジャブン・・・龍がこっそり笑った。